評価 | ★★★★☆ |
原題 | Yes Man |
公開 | 2008 |
時間 | 104 min |
監督 | ペイトン・リード |
出演 | ジム・キャリー ゾーイー・デシャネル ブラッドリー・クーパー |
First Impression ─まえがき
ジム・キャリー主演のラブコメ。
イエスマンと言っても偉い人に追従ばっかり言う人の揶揄のほうではない。
ジム・キャリーだから内容は大体面白い。おまけに太ってない頃のヤバイくらいに美しいデシャネル妹も出ている。
こういう映画は言うべきことが少なすぎて困る。出来もそれなりに良いから文句を言うことも難しい。
Plot ─前半のあらすじ
銀行員カール・アレン(ジム・キャリー)は離婚以来、友達付き合いも敬遠し休日は家に引きこもる毎日。
そんなカールを見かねた友人のピーター(ブラッドリー・クーパー)は無理やり飲み会に連れ出す。ピーターは自分の婚約パーティにカールを誘うが、カールはそれすら都合がつかないと言って断ろうとする。おまけにバーで元妻のステファニーと出会ってしまい、気まずくなってバーから逃げ帰る。
翌朝カールはお隣さんの朝食の誘いも断ってカフェで食事を簡単に済まし、道端で配られていたライブのチラシも見もせず貰いもしない。支店長からのコスプレパーティの誘いも行けないと拒否し、顧客からの融資の相談も全部不可能だと断る。
そんな何事にもやる気を見せず “NO” を言い続けるカールは、昼休みにに銀行の外で友人ニック(ジョン・マイケル・ヒギンズ)に出会う。自分の経験を楽しそうに話すニックは、カールにある自己啓発セミナーを紹介する。
だがカールは全てを面倒事と拒否する生活をやめられない。夕にはいつもどおりレンタルビデオ店で借りてきた映画を見ていると、親友ピーターがカールの部屋のチャイムを鳴らす。
今日は俺の婚約パーティだったというピーターに、カールはしらばっくれて塩対応。そのうちピーターはマジギレして「このままではお前に待っているのは孤独死だ。ひとりで寂しく孤独に死ぬんだ」との言葉をカールに投げつけて帰ってしまう。
その夜自分が部屋のなかで阿呆面して頓死している悪夢を見たカールは、ニックが紹介した「『イエス』は人生のパスワード」なる自己啓発セミナーに行ってみることにする。
とはいえカールはセミナーには半信半疑だった。セミナーに姿を見せたカールをニックが皆に紹介するも、カールは「やめてくれ」と身をすくめる。
セミナーの主催者テレンス(テレンス・スタンプ)はカールを壇上に呼ぼうとするが、カールは「見学だから」と拒否。するとテレンスはカールの目の前までやってきて、「君は人生自体に “NO” と言う死人だ」と語る。そして「周りの人間だけでなく、自分にも言い訳ばかりしている」と図星を突かれる。
そんなカールにテレンスは自分自身に対して誓約を立てろと迫る。「この建物を出たあと決断を求められる機会があるたびに、それがなんであれ “YES” 」と答えろ」と。
そしてついにカールはテレンスの気迫に押されて、”NO” と言わない誓いを立てることになった。
だがセミナーを終えてもカールはいまいち乗り気ではない。自分の車に乗り込もうとするとホームレスに山の上の公園まで乗せてってくれと頼まれ、”YES”とは言えずに迷う。
そこへリックが “Yeeeeees” と叫びながら戻って来る。仕方なくホームレスを車に乗せると、携帯電話を貸してくれとまでホームレスに頼まれる。するとこれまたリックに “Yes” と言えと突っ込まれ、いやいやながら電話を渡す。
公園までホームレスを送ったカールだったが、携帯電話は充電切れ、車はガス欠、おまけに無礼なホームレスに2ドル貸してくれと言われ、自暴自棄なって財布の中身を全部渡してしまう。
近くのガスステーションまで歩いて来て、文句をブツブツ唱えながらポリタンクにガソリンを流し込むカール。そんな猫背でタンクにホースを突っ込んでいる間抜けなところを、後からバイクでやって来た女性にカメラで撮影されてしまう。
その女性アリソン(ゾーイー・デシャネル)は写真を撮らせてくれたお礼にカールを公園の車のところまで乗せてやる。
自分の車にポリタンクのガソリンを供給した後、別れ際「もう平気?」と尋ねられたカールは、「キスをしてくれたらもっといい」と軽いジョークをいう。するとアリソンは、有無を言わさずカールにキスをし、バイクで走り去るのだった。
Review ─批評と解説
わたしもどちらかというと、主人公カールと同じタイプの人間である。基本的に他人を信用してはいないし、できれば家に引き篭もっていたいタイプだ。
友達も少ないし、別に他人とそんなに話したくはないし、何事にもやる気はないし、仕事も行きたくないし、昼間は買い物に行こうと考えているうちに何故か昼寝をしているし、夜は毎日ひとりで映画作品を見ているし(こんなブログをやっているので当然だが)、このブログだって面倒くさくなってそのうち書くのをやめるかも知れない。ほとんど誰も見てねーし!
そうやって何事にもネゲティブで生きていくのはそんなに悪いことか? 「吉良吉影は静かに暮らしたい」のだ。良いことではないが、別に悪いことでもないだろう。少なくともこちらから災難に近づく確率は行動派キャラに比べて少ないはずだ。多分。おまけにそんなにカネも減らない。
だがひとつ言えることはある。「宝くじは買わなきゃ当たらない」。
何か事が起こり得るとき、その選択肢に自分が入っていなければ起こりようがないというのは、決定的に言えることである。
オーディションを受けなければオーディションに受かることはない。あのこがぼくの存在を認知していなければ、ぼくがあのこに選ばれることはない。彼がわたしを知らなければ、彼がわたしの手を取ることは絶対にない。
「知られていても選ばれることなんてないよ」。かも知れない。でも知られていなければ選ばれることは絶対にないのだ。知られていれば可能性は少なくてもちょっとはある。これは絶対の真実である。ニュートリノが軌跡を描く時そこに陽子も中性子もなければ反応のしようがないのだ。それが如何に低い確率であってもね。スーパーカミオカンデ!
たぶんこの作品が言いたいことはそういうことなんだろう。
先にも言ったように、もちろん出会ってしまうのは良いことばかりではないかも知れない。だが悪いことばかりでもない。これも確かなことである。
長い人生のなかで、たまには自分を信じてみるのも良いんじゃないかとは多少は思うのだ。
と作品の内容とはまあまあずれたことを書いたが、この映画自体はそれなりに面白い。ジム・キャリーだからギャグはそれなりに面白いし、退屈はしない。おまけにデシャネル妹がすごい可愛いし、ブラッドリー・クーパーが相変わらず超イケメンなのでそれでもやっぱり退屈はしない。
ただ最後のシーンでセミナーの会衆が全員素っ裸になっているのは若干滑ってる。まあコメディだからオチをつけなきゃということなんだろうけど。
<おわり>