『THE 4TH KIND フォース・カインド』 :総力特集:異星人アヌンナキと古代シュメール人の謎

評価★★★★☆
原題The Fourth Kind
公開2009
時間94 min
監督オラトゥンデ・オスンサンミ
出演ミラ・ジョボビッチ
ウィル・パットン
イライアス・コーティーズ

実は実在の事件ではないよ

クローズ・エンカウンター物では最高峰といっていい。都市伝説として手垢のついた古代文明の謎を加えているのに、よくぞ上手い位置に落としたものだと思う。なお本国アメリカでの評価は酷評に近いようだ。マジか。面白いと思うんだけどなあ。

この作品は2000年10月1日から9日にかけて起きた実在の事件を再現したものである。映像は事件の実際の当事者タイラー博士(シャーロット・ミルカード)によって記録された音声・映像と、ミラによる再現映像を交えて描かれている。

夫を何者かによって殺害された経験のある心理学者アビゲイル・タイラーは、アラスカの町ノームで不眠症患者に対してカウンセリングを行った。すると奇しくも、三人の患者が同様の、目が覚めた時に窓の外にふくろうを見たという証言をしたのだ。アビゲイルがやはり心理学者だった夫の持ち物を調べると、彼もまた同じケースに気づいていたことを知る。そこでアビゲイルは患者のひとりトミーに催眠療法を行い、謎のふくろうと不眠症の原因を探ろうとする。


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私は前世ではアトランティスの光の戦士でした

いきなり恥ずかしい過去を打ち明けるが、私は中高生の頃、月刊ムーが大好きで毎月買っており、特に超古代文明関係の話は大好きだった。だからこの作品の背景は、ある程度知っている。

「人類に文明がもたらされたのは、宇宙人がシュメール人に知識や技術を教えたからである」というオカルト話を最初にでっち上げたのは、ソビエト生まれの米作家ゼカリア・シッチンである(多分)。

これは都市伝説としては中々慧眼であって、宇宙人フリークや超古代文明フリークの中では、信じるか信じないかは別にして、知っていてしかるべき大前提である。

シッチンはこうした奇想天外な説を全くのゼロから作り上げたわけではない。

バビロニアの伝承

バビロニアの伝承には、神の使いが人間に知識を授けたというものが確かに存在する。前三世紀のバビロニアの神官ベロッサスがこの人間に知をもたらした存在について記しており、それを「オアンネス」と呼んでいる。

オアンネスはアッシリアでは「アダパ」という名で知られており、このアダパの伝承が変形して聖書に記されたものが最初の人間「アダム」のストーリーである。アダパやアダムもやはり「知識」と関係する伝承を持っている。

また「フォース・カインド」ではふくろうが異星人の重要なモチーフとして示されるが、シュメールの女神イナンナの従者もまたふくろうである。

イナンナの後身にあたるエジプト神イシスやギリシャ神アテナもまたふくろうを連れている。このふくろうは「知識」或いは「知恵」を意味していると思われる。

盛り上げはさすが上手

この作品にはこうした都市伝説を効果的に使い上手く盛り上げている。校内に佇む娘アシュリーの前でふくろうの鳴き真似をするミラや、食事の前のお祈りなど、その後の展開を暗示する小技をちょくちょく入れてくるのもまた良い。

流れもまた素晴らしい。映画はミラの意味深な問いかけから始まり、すぐに物語にのめり込ませてくれる。低予算のエイリアン系映画のように無意味なカットやシーンを挟んだりしないし(当たり前か)、最初から最後まで緊張感を保って見させてくれる。

だが設定をところどころぶん投げているのは問題だ。アシュリーが目が見えなくなった理由は恐らく父親の死を目撃してしまったことにあり、またタイラー一家は家庭崩壊に近い状態にあったことが暗示されていて、「実はアビゲイルは錯乱していて宇宙人の話も妄想である」というもうひとつの見方が可能であるように描くはずであったと思われる。

しかしアビゲイルには捏造が不可能ないくつかの映像が確実に存在し、目撃者も存在、且つ宇宙人の方の話をかなり強く描き切ってしまったが為に、アビゲイルの妄想オチのほうは完全に捨てられてしまう状態となっている(自信はないが、多分そういうことだと思う)。この部分をうまく纏められたならば、もっと良い物になっていた可能性が高いのは残念だ。

なお家族を殺したトミーが叫んでいた謎の言葉「ズンアブ・イーター」こと「ZIMABU ETER」はとあるサイトによると「Life Dragons from Space(宇宙からの命の龍)」もしくは「Spirit whom you cannot be saved from(抵抗不可能な霊的存在)」なのだそうだ。

<おわり>

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