『ザ・フォーリナー/復讐者』 :ジャッキー、今度はIRA相手に一発やらかす

評価★★★★☆
原題The Foreigner
公開2017
時間114 min
監督マーティン・キャンベル
出演ジャッキー・チェン
ピアース・ブロスナン
オーラ・ブラディ

Trailer :予告編

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First Impression :まえがき

ピアース・ブロスナン&ジャッキー・チェンという異色の作品。

完全にシリアスな作品。IRAのテロが主体として描かれており、モチーフ自体はヘビーに見える。

ヘビー見えるのだが、IRA(日本版の作中では何故かUDIという名称になっている)の内部抗争に中国人のジャッキーが横合いから飛び入り参加するというシュールな構図

しかもジャッキーがカンフーだけでなくデモリッションの達人にもなっていて半ば「ランボー」化しており、シリアス作品なのにメタ的に笑いを取りに来てるんじゃないのという疑いが禁じえない。

そこのところを除けば非常に良く出来た作品で、★★★★★にしようかとも思ったわけだが、いくつか考えて★★★★☆にした。

Plot :前半のあらすじ

ロンドンで中華レストランを経営するクァン・ノク・ミン(ジャッキー・チェン)は、シティで一人娘のファンとの買い物を予定していた。

目的の店の前で先にファンを車から降ろしたクァンは、駐車場所を探して車を発進させた。クァンが路上の空いた場所に駐車しようと自分の車を走らせると、バックしてきた車にぶつけてしまう。

クァンが運転席から出てバックしてきた車の主に文句を言おうとしたその刹那、後方で大きな爆発が起こり、クァンは歩道へと吹き飛ばされてしまう。

爆発の衝撃から我に返ったクァンは娘ファンの姿を探すも、ファンは店内で爆発に巻き込まれ息絶えていた

この爆弾テロを行ったのはアイルランド独立を旗印にする武装組織UDIであり、イギリスによる北アイルランド占領を利する経営を行っている銀行に対しての実力行使だった。

このテロのあった頃、北アイルランド自治政府の副主席大臣リアム・ヘネシー(ピアース・ブロスナン)はホテルで愛人との逢瀬を楽しんでいたが、携帯電話で事件についての一報を受ける。

リアムはイギリス政府の閣僚ケイト・デービスと連絡を取り、収監されているUDI関係者に恩赦を出すことで急進派の態度の軟化を促し事態の沈静化を図ろうとする

リアム自身かつてはUDIでテロ行為を行っていた急進派だったが、刑に服して以来考えを改め、今では北アイルランド議会の野党のトップとして活動していた。

またその一方でリアムはUDIの有力者を集め、実行犯と首謀者の割り出しを急ぐ。アイルランド政府とイギリス政府は1998年に合意し北アイルランド政府を設立していたが、今回のテロはこの19年間の合意の維持に水を差しかねないものだった。

テロに使われた爆薬はUDIの所持していたものと見られ、リアムはUDIの武器、弾薬、そして爆薬の在庫の確認を命じる。

一方クァンはテロ実行犯の名前を聞き出すためロンドン警視庁のテロ対策課に直接赴く毎日だった。クァンは警視長のブロムリーに2万ポンドを渡してまで犯人を教えてくれとせがむが、ブロムリーにそんな行為はむしろ捜査の妨げになると断られる。

警察は当てにならないと見たクァンは独自に捜査を開始する。元UDIの闘士としてリアム・ヘネシーがTVショーで事件について話しているのを見たクァンは、リアムに直接電話をかける。だがクァンがテロリストの名前を教えろと言っても、リアムは知らないというばかりで電話をすぐに切ってしまう。

ここでクァンは実力行使に出ることを決意する。

Review :批評と解説

この作品は人間関係が微妙に複雑で、そこにIRAの内部抗争らしきものが絡んでくるので、ストーリーを把握するのがやや難しい。スクリーンから目をそらしていると「あれどういうこと?」と巻き戻すことになりかねないくらいだ。

その複雑な人間関係のなかでジャッキー・チェン演じるクァンだけが他の登場人物と無関係で独立しており、完全に浮いてしまっている

ストーリーとしてはIRA(UDI)内部の抗争が主体。ブロスナン演じるリアムが、約二十年間にわたる平和的状況のなかでIRAの存在感を忘れさせないために犠牲者が出ないように爆弾テロを引き起こさせたが、現場の下っ端がその命令を無視して一般市民を巻き込ませてしまったという筋書き。

つまり一般人へのテロを指示したわけではないにせよ、結局リアムが爆弾騒ぎの実行を命じており最終的な黒幕である。

そこにリアムの不倫や妻の不倫や、実はリアムの愛人が実行犯のひとりだったとか、かつてのリアムの同志が一般人を狙ったテロを指示していたとかの傍系ストーリーが複雑に交錯してくる。

昨今おとなしいIRAにツッコミを入れてきたストーリーは緊迫感もあってなかなか面白い。だがそれらは実は作品にそれほどの重みをもたらしていない。

というのはIRAの存在はほとんどジャッキー・クァンを引き立たせるためのマクガフィンとしてしか作用していないのだ。

この作品において、IRAの思想や歴史や、アイルランドとイギリスの対立の歴史、北アイルランドの政情、宗教的対立等々、北アイルランド問題に付随してくることが語られたり、その根深さや国民市民感情などが描かれることはない。

それらが描かれないことが問題とは言わない。だが敢えてIRAである必要もない。リアムの問題もほとんど妻や甥との関係に終止してしまっており、IRAのパートも問題となるのは単に命令系統の混乱と、スコットランドヤードとの取引くらいだ。

例えば、娘の復讐を絶対に遂行しようとするクァンと、復讐の応酬はもう止めるべきだと考えているリアムの信条的対立が描かれたりするのであれば、そこにIRAというものの存在がもっとクローズアップされることもあったろうが。

結局の所、この『ザ・フォーリナー』はIRAのテロリストとスコットランドヤード相手に老ジャッキーが一発食らわすというところだけが見世物となっている。そういう部分は確かに香港映画らしいとも言えるかもしれない。

もちろんそれはそれで面白い。ジャッキーのアクションシーンは彼自身が指導しているのだろう、ワイヤーを使っていると思しきところもあり、それはどうなのと思うが、気にするほどのことではない。

だがIRAが絡んで来たことで、「お、そのへんもヘビーに描かれるんやな?」と考えていると肩透かしを食らうので注意が必要である。

<おわり>

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