『アイ・フランケンシュタイン』 :天使と悪魔の戦いにフランケンシュタインが殴り込む

評価★★★☆☆
原題I,Frankenstein
公開2014
時間92 min
監督スチュアート・ビーティー
出演アーロン・エッカート
ビル・ナイ
イヴォンヌ・ストラホフスキー
ミランダ・オットー

First Impression ─まえがき

フランケンシュタインの怪物」をモチーフにした作品。

フランケンシュタインの怪物といえば、四角い頭にやたらに広い額、張り出した眼窩の上部に厚ぼったく垂れ下がった瞼、そして大きくて丈夫そうな顎と低い知能いう例のイメージがある。

これらのイメージは1931年のボリス・カーロフ主演の映画『フランケンシュタイン』から踏襲されてきたもののようだ。

メアリー・シェリーの元々の小説では、怪物は非常に知能が高く、容貌はスマートではないものの長髪である。小説では怪物は自らのアイデンティティと、自分を怪物扱いする人間との関係に悩むのであり、このテーマは現代にあっても様々な物語における極めて普遍的なテーマである。

とりわけロボットものやAIものでは上記のようなテーマは欠かせないものであり、シェリーの小説が如何に優れた時代的意義を表していたかが察せられる。

少なくともこの作品の導入部と怪物自体の設定は本来のメアリー・シェリーの小説に割と忠実である。

そこに結構重大なファンタジー要素が付け加えられているのだが、興味深い設定ではあるものの、もうちょっと上手く消化及び昇華できたならばさらに良い作品になっていただろうと思うのだ。


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Plot ─前半のあらすじ

1795年にヴィクトル・フランケンシュタイン博士によって人の屍体を縫合して作られた人造人間(アーロン・エッカート)、彼は人間と同様の知能があり、人間を超える腕力と運動能力を持ち、また感情を覚える生物だった。

だが彼の創造主フランケンシュタイン博士はこの人造人間を恐れ、有刺鉄線で簀巻きにし川に投げ捨てて始末しようとした。

だがこの人造人間は死ななかった。彼はフランケンシュタイン博士への復讐として博士の新妻を殺害した。今度は博士が北極まで逃げた人造人間を追い新妻の復讐を果たそうとしたが、博士は逆に寒さで凍えて死んでしまう。

凍った博士の遺体を見つけだした人造人間は哀れみを覚え、遺体を担いで家へ戻り家族とともに埋葬してやることにする。

博士の遺体を埋葬し終えたとき人造人間は謎の男たち囲まれていたことを知る。異形の姿を現した男たちは「お前を待っていた」と告げ、「一緒に来い」と人造人間を腕ずくで連れ帰ろうとした。

人造人間は力及ばず捕縛されそうになるところを、別の勢力に助けられることになる。有翼の姿から人間状に変身した彼らは、人造人間を自分たちのアジトに連れて行く。

彼らは、自分たちは「ガーゴイル」であり、人間を守護する使命を大天使ミカエルから与えられているのだと人造人間に明かす。そして人造人間を襲ったのは悪魔、魔界の王子ナベリアスの手下だと教える。

人造人間はガーゴイルの女王リオノアによって「アダム」という名を与えられた。アダムはガーゴイルたちに悪魔を倒すための協力を依頼されるが、ひとりがいいとその依頼を断る。アダムは博士に裏切られたことで誰も信じることができなくなっていた。

年老いることもなかったアダムは数百年もの間人里離れた場所で過ごしていたが、ついにアダムの元へナベリアスからの刺客がやって来る。

刺客どもを蹴散らし、ついにナベリアスと戦うことを決意したアダムは人間たちの住む世界へ戻るが、人の世は近代社会へと大きく変貌していた。

Review ─批評と解説

アーロン・エッカート演じるフランケンシュタインの怪物はかなり格好良く、主人公キャラとしては申し分ない。だが魅力的なキャラはそれくらいで、特に敵方の悪魔の俳優や造形が一辺倒。ガーゴイル方も悪魔と同じ黒主体の衣装なので、その辺のデザインにもうちょっと緩急つけられなかったかと感じられる。

ストーリーはトントン拍子に進み、アクションもそこまで悪くはない。面倒くさくならず見れるのは良い部分だろう。だが荒削りな部分が多いのは否めない。

特に冒頭、アダムの独白による状況の説明から入るのがいただけない。基本的に観客へディテールを知らせる際にはストーリーを通して察せさせるのが本来の手であって、がっつり説明を入れてしまうのは悪手だ。

フランケンシュタイン博士とアダムとの絡みの部分も十分ストーリーとして組み込んでいけるはずだったと思うのだが、もったいないことをしている。

特にアダムの心にも存在していた人間性を抽出するには博士との関係は避けては通れなかったはずだ。単なるアクションのみで終わらず、人間ドラマもより強く加味していくべきだったろう。

天使たるガーゴイルと悪魔の抗争をフランケンシュタインの怪物に付け加えてきたのは良いアイディアだと思う。だがこれもいささか中途半端に終わっている。

これに関しては家庭用ゲームに『真・女神転生シリーズ』という、まさに同様の内容を扱ったものがあり、この『メガテン』を知っているものからすれば、『アイ・フランケンシュタイン』の内容はちょっと薄いと言わざるを得ない。

人造人間アダムのアイデンティティと、天使と悪魔の抗争というふたつのテーマはキリスト教モチーフ及び神学と非常によくマッチしたはずであり、これから訪れるであろうAIロボット社会への示唆という社会的な描写へも繋がったはず。

あるいはフランケンシュタインの怪物とAIロボットの邂逅なんてのも、結構面白い描写だったと思うのだが。

<おわり>

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