ANON アノン : 隠しておくにはあまりに美しい

原題:ANON アノン

公開:2018年

時間:100分

監督:アンドリュー・ニコル

出演:クライヴ・オーウェン / アマンダ・セイフリード / マーク・オブライエン / コルム・フィオール

評価:★★★☆☆

Trailor 予告編

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First Impression まえがき

監督は「ガタカ」のアンドリュー・ニコル。

ジャンルは「テクノスリラー」に入れたが、もっと分かりやすく言えばSFサスペンス・スリラーである。

スタイリッシュな映像美とアマンダ・セイフリードの容姿美がメインの作品で、それ以外はおまけである。相変わらず静かにそして低調なテンションで進む独特の雰囲気がやっぱり意識高め。

その意識高めに現代の社会風刺を織り込んでいるのかどうかは分からないが、そうだとしたら多分大して上手くは行っていないのが残念。

Plot あらすじ

人類の視界がインプラントによるネットワークと繋がれた近未来。刑事サル・フリードランド(クライヴ・オーウェン)は出勤途中、ある女(アマンダ・セイフリード)を発見する。刑事用に強化されたシステムは視界に入った人々の名前を始めとする情報を確認出来るはずだったが、その女だけはアンノウン、そしてエラーと表示されていた。サルはこれをクライアント側の確認失敗としてやり過ごした。

刑事用の強化システムは他人の視界ファイルを参照することも可能だった。これによってあらゆる事件事故現場を当事者の視点から見ることができた。このシステムによって自殺も窃盗も殺人も何もかも、当事者たち、あるいは第三者の視界の参照のみで解決できるのだった。

このシステムを利用した取り調べの最中、サルは新たな殺人事件の発生を確認する。被害者は自分の部屋で眉間を銃で撃たれた中年男性だった。サルは先に到着していた同僚のチャーリー( コルム・フィオール )に事情を尋ねるが、チャーリーは困惑した表情でサルに被害者の最期の視界を送った。

その映像の中で、帰宅後ワインを飲み本を読んでいた被害者だったが、突然映像が何者かの視界に切り替わっていた。眼前に銃を構えた映像は明らかに犯人の視界であり、犯人は被害者の視覚に侵入、そしてハッキングして自分の視界に繋げ、後にファイルを参照する者に対して犯人自身の姿を見せないように工作していた。

またビルの監視システム側から犯行時間付近の状況を確認すると、被害者はひとりで過ごしていたことになっていた。そこにいたはずの犯人を、監視システムはいっさい検知できていなかったのだ。

チャーリーは過去にひとつだけ存在した類似の事件のファイルをサルに送る。そのボルティモアの事件でも被害者は同様の手口で殺されていた。こちらの事件では最後の訪問者、おそらく匿名の殺人犯が女性であることだけは確認されていた。

そこでサルはこの朝に見た女を思い出し、その女の写ったファイルをチャーリーに送った。だがその夜、サルはこの女のファイルが突如消されたことを確認する。何者かがサルの視界記録に侵入したのだ。

Review 批評と解説

サスペンスとしては微妙感が否めない。というのは、作り手がこの視界ネットワークシステムのアイディアを持て余しているように思えるのだ。

現代の我々の社会でも監視カメラによって事件が解決の方向に向かうのは往々にしてあることだ。この「アノン」の世界観はそれの拡大版である。あるいは拡大版でしかないとも言える。

そして視界ネットワークの存在するディストピア的世界を設定しつつも、そこで引き起こされるのが単なる視界記録の改竄と殺人事件、そしてストーカー行為だというのはちょっとストーリーとして弱過ぎるのではないか?

セイフリード演じるアノンが行うハッキングもブラックボックス化しており、見ている我々はそのファイルが「消された」「書き換えられた」とストーリー上で知らされるだけだ。もちろんそこでテクニカルな説明をされても理解できないだろうが、しかし何らかのギミックがなければ我々は浅瀬に留まるしかない。作品の中へ深く泳ぎ世界を楽しむにはディテールの深度が必要なのだ。

また物語の最後のアノンとサルの会話も空虚だ。

アノン「プライバシー侵害は許され、守るのは罪?」

サル「分からないか?隠れるから追われる。なぜ存在を消したい?君が隠したい秘密は?」

アノン「あなたには分からないでしょうね。私に秘密はない。見せたいものがないだけ」

という言葉が、ネットワークシステムと他人の記憶に侵入できる天才ハッカーで殺人をも平気で行う超美女のアノンから発せられるのはあまりにも白々しい。よっぽど「私みたいに美人だと今回みたいにストーカーに追い回されてうざいからよ」とでも言ってくれた方がマシだ。

まあおそらくこれは監視社会になりつつある我々の世界への警鐘として監督アンドリュー・ニコル自身がどうしても言いたかったことなのだろう。

Afterword さいごに

視界ジャック(どこかで聞いたような言葉だな)を逆に利用して同僚の刑事やストーカーを欺いたアクションはそこそこ良かったし、アマンダ・セイフリードの裸体とセックスシーンも妖艶で非常に美しい。

物語の流れも、もうちょっと先を見たいと思える程度には牽引していってくれている。

でもそれだけで終わってしまったのは惜しい。ストーリーにもう一段か二段ほどの飛躍があれば社会風刺も活きるようになったかもしれない。

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